平成23年度外務大臣表彰授与式における 総領事祝辞
荒先生、ご家族の皆様、並びにご友人、後援者、来賓の皆様、おはようございます。本日ここに、皆様とともにハワイ天台宗の開教総長であられる荒了寛師への、この度の外務大臣表彰をお祝いすることができますことを誠に欣快に存じます。日本国政府を代表いたしまして、荒先生が、日本とハワイ、ひいては日本と米国間の相互理解の増進並びに友好関係促進のために、長年に亘りご尽力下さったことに対し、心より御礼を申し上げます。
外務大臣表彰は、経済、技術協力等の国際協力の推進、文化事業の振興等の国際的な活動を通じ、諸外国との相互理解及び友好親善の促進に寄与した方達に対し授けられます。
荒先生におかれましては、長く、当地日本人社会のコミュニティー・リーダーとして多方面に亘りご活躍され、当地日本人の顔として、また、心として、皆の敬慕を集めて来られました。今回の外務大臣表彰はこれら先生の全人格的な業績を踏まえてのものですが、特に、ハワイにおける日本文化の紹介、普及に努められた功績、並びにハワイ日系移民の歴史資料の収集と保存への貢献については、特筆すべき大きな貢献であり、今回の授章の決め手になった点であると伺っております。
荒先生は、1970年代初頭に天台宗開教総長としてハワイへ移住された際、宗派を超えた活動を行うことが肝要であると考えられ、信徒に仏教の基本的な教えを授けられると同時に、地域の活動にもお力を注がれました。日本文化の普及に努められる中で、天台宗別院内に書道、生け花、日本画、茶道等を教える「天台文化教室」を開設されました。これが当地最初で唯一の日本の芸術を中心に芸術振興を図らんとする「ハワイ美術院」の設立に結実し、この伝統が今日にも引き継がれております。
また、1975年には、仏教の精神に則った奉仕団体として「一隅会」を結成されました。その活動の中には、日本人移民一世の記録をビデオテープに収録する移民資料保存事業がありました。この事業により収集された貴重な資料は、1985年の官約移民百周年記念の際にビショップ博物館に寄贈されました。現在、ビショップ博物館側の事情で永久展示は実現していませんが、科学的に分類、整理された電子データとしても記録され、将来の展示のために収蔵庫に大切に保管されていると承っております
更に、新たな日系移民の記録事業として、ハワイ出身の日系兵達の記録を手記の形で収集し、「ハワイ日系米兵:私達は何と戦ったのか」というタイトルの本にまとめられました。この本は日本で出版されましたが、その英語版も後にハワイ大学から出版され、ハワイ日系人の歴史を知る上で貴重な資料となっています。
官約移民百周年記念祭において、荒先生は、ハワイ仏教連盟の会長としてのお立場から、「日米仏教徒会議」、及び「日米仏教学大会」等を企画され、宗派を超えた歴史的な行事を成功に導かれました。また、1987年には平和への祈りと物故者への鎮魂を込めたホノルル灯篭流しをアラワイ運河で始められ、十数年に亘り灯籠流しをワイキキ地区に紹介されました。この灯籠流しは、その後真如苑に引き継がれ、今日、メモリアルデーのメインイベントとしてアラモアナ公園で大々的に行われ、ホノルル市民の圧倒的な支持を得ていることは皆様ご承知の通りであります。仏教行事がキリスト教国で市民行事として認知されるまでに受け入れられた数少ない例だと思いますが、荒先生の地道な活動があって初めて可能となった文化輸出と言えるものでしょう。
今般の、東日本大震災で被災された福島、宮城方面は荒先生の日本での地元です。宮城県人会長でもあられる荒先生は、何度も被災に足を運ばれ、ハワイの善意を自ら届けられました。芸術家としての技や名声、幅広い人脈など荒先生がお持ちのあらゆる資質、資産を駆使されながら、日本とハワイの架け橋となられました。もっともシニアでもっとも元気なボランティアであられたのかも知れません。
荒先生への感謝の言葉や業績の列挙はまだまだ続きますが、そろそろ締めくくりたいと思います。荒先生の事ばかり申し述べましたが、令夫人のご貢献についても言及しなければなりません。荒先生のお仕事を側でしっかりと支えてこられた令夫人のご貢献とご献身に対しましても衷心より感謝の言葉をお贈りいたしたいと思います。
荒先生。荒先生は、ただただそのお人柄でその場にいらしていただくだけで、我々に活力とインスピレーションをお与えになられます。今後更にどうして欲しいということは申しませんが、ただただ末永くご健勝であられますように念じるのみでございます。本日は、誠におめでとうございます。
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