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在ホノルル日本国総領事館
Consulate General of Japan
at Honolulu

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総領事のコーナー

 

 
総領事スピーチ

天皇誕生日レセプション加茂総領事挨拶

 

(冒頭挨拶)

ハナブサ上院議長、アリヨシ元知事、ご列席の皆様。今晩は。ご来場を歓迎。アローハ!

 日本の国歌「君が代」をハワイの地で初めて聞いた。キャシー・フォイ=マヒの熱唱とロイヤル・ハワイアン・バンドの職人芸がこの感動を届けてくれた。私がハワイで聴く初めての「君が代」であり感無量だ。130年ほど前、当時の政府は国歌の制定を企図し、その制作を音楽家に委託した。「君が代」の歌詞は、天皇が末永く小石に苔むすまで何代も何代も栄えるように祈るという内容の、天皇を称える10世紀の和歌から採られ、それを伝統的な雅楽の旋律に乗せた曲である。1880年に作られ日本の国歌となった。1903年にドイツで開かれた世界国歌コンテストで堂々一等に輝いた。世界で最も古い皇統を称えるこの「君が代」は、世界で最も古い歌詞を持つ、世界で最も短い国歌である。

私が世界で太平洋の中心に位置する恵まれたハワイに着任して3カ月が経った。ハワイは、自然、人、機会ともに格別。毎日が新発見で心を躍らせている。本日ここに挙行する天皇誕生日記念レセプションは、天皇ご即位20周年と7月の両陛下のハワイご訪問のご成功をも祝う式典でもあり、皆様のご参加で盛会を得たことを衷心より感謝する。今日の私の挨拶は、天皇陛下や皇室のことに焦点を当ててみたいが、今般の両陛下のハワイご訪問については来賓のご挨拶で触れられると思うので、重複しないように述べてみたい。

(ハワイと日本の皇室)

両陛下は今年結婚50周年を祝われた。ハワイは両陛下の新婚旅行の地でもある。その後も度々ハワイを訪問なされている。陛下が如何にハワイに親しみをお持ちかは、総領事館敷地内にある植樹記念碑を見ればよく分かる。これまで7本の樹木が、陛下を始めとする皇族の方々のご訪問を記念して植えられている。このような総領事館は当館だけである。

古くは、ハワイ王朝時代より天皇家とハワイ王家の間には親しい紐帯が存在していた。実現しなかったが両家の間には縁談もあった。日系移民が最初にハワイの地を踏んだのが1868年、明治維新がなった明治元年であった。明治は700年近く続いた武家政治を退け、天皇親政により封建社会から近代国家への移行をなした変革の時代であった。明治天皇は希代の開拓者であった。立憲君主として新たに備わった執行権を奮って明治国家の国際デビューを果たし、荒波逆巻く国際的な権力闘争ゲームの中で新生日本の舵取りを行った。

日系移民は明治天皇が吹き込んだ時代の精神を携えハワイに移住し、困難に良く耐え、ハワイの原野を切り開いた。彼らは明治の開拓者精神の具現者達であった。

(天皇制と日本)

 日本の皇統は、歴史文書によりその実在が証明されている天皇に限定しても1600年以上前に遡る。過去1600年以上にわたり、天皇は日本の首長として君臨してきた。原初、天皇は豊作を祈願する祭祀の主宰者として頭角を現し、農耕社会日本で権力を奮うようになった。武家政治の時代は、直接権力を振るう機会も殆どなくなり、国民の目から遠ざかったが、日本国の権威の源泉であり続けた。将軍といえども、天皇の認可を得て国政を担う形をとった。明治時代の幕開けとともに天皇に近代国家の立憲君主としての新たな役割が付与されたことは既に言及した。戦後、天皇は再び政治権力を奪われたが、新たに象徴的な役割を付与されて今日に至っている。

 戦後採択された日本国憲法は主権在民を謳っている。また別の規定では、天皇は日本国の象徴であるとともに日本国民の統合の象徴であるとされる。憲法が期待する天皇像とはどのようなものであるか。民主主義からは平易な論理が導きだされる。天皇は国民に奉仕すべきという論理である。象徴天皇は国民の目線に立ち、国民の心に同調してゆくことが期待されている。他の多くの人々と同様、日本国民は世界平和と生活の無事を願っている。それがそのまま陛下の願いでもある。この象徴天皇制は日本でよく機能しており、我が国における民主的伝統の根幹としてしっかりと根付いている。

オバマ大統領は、米国が依って立つ建国の価値体系や理念を守るために米国は最善を尽くすとしばしば聴衆に訴えかける。大統領の言葉は米国人の心に力強く響くことであろう。考えてみれば移民国家アメリカ合衆国は、230年前の建国当時から、米国市民が建国理念に奉じることを間断なく誓約し合うことにより力を引き出し、結束力を高めている国家だ。日本には、このような意味での建国理念はない。必要ないのだ。我々も、自由も民主主義も人権も他の立派な理念すべてを尊ぶが、そのことが日本らしさの決め手ではない。

(日本らしさ)

 真の日本らしさとは何か。何が日本と同義なのか。稲作、機織り、神道、仏教、日本語、かな、和歌、富士山、源氏物語、儒教、武士道、能、茶の湯、忠義、慎重、合理性、誠実、忍耐等々際限なく列挙することができるが、一つ選ぶとすれば、それは天皇であろう。天皇が及ぼす圧倒的かつ企てのない権威は比類がない。日本国民は天皇の権威を受け入れることを誰からも強制されていない。そんな法律もない。天皇陛下への敬愛の念や賛嘆の情は自然な感情の発露なのである。この点に日本人にとっての天皇の意味合いが端的に示されているように思う。

  天皇と日本は古から今日までよくぞ歩んできたものである。過去1600年、天皇制の下での日本は春秋に富む歴史と誇らしい伝統を連綿と紡いできた。稲作農民として職人として、中国と愛憎半ばする関係を築いた者として、貴族および武士の興亡の証人として、戦勝者としてまた良き敗者として、民主的な平和愛好国として、我々はこの変遷を生き抜いてきた。そして今日も元気にやっている。この民族的体験こそが我々が抱きがちな名状しがたい自信と楽観の源泉なのである。日本社会の土台はこれまでもずっと天皇制にあり、何がこようと天皇が存続する限り今後も日本は大丈夫だと感じるのである。

(結語)

 さて、皆さん、日本人になりたくなったのではないか。少なくてももう一度「君が代」を聴きたくなったことと思う。重厚で威厳のある「君が代」、勇壮なドラマが眼前に浮かんでくる「星条旗よ永遠なれ」、優美な従容を感じる「ハワイ・ポノイ」、いずれも素晴らしい名曲で何回聴いても感動する。さて、このなかでどの曲が最も人気があると思うか。今宵聞いたこの傑作3曲の中で優劣を比べるのは簡単ではないが、私見を述べれば、必ず歌詞の2番ないし反復節が歌われる「ハワイ・ポノエ」に軍配が上がるのではないか。「星条旗よ永遠なれ」も「君が代」もそれぞれ2番の歌詞があるが、歌われたためしがない。

 

マハロ  

                           

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